ニーバ、 ニンノ、 ニッピ 区問
ニンノの位置通報はありませんので到達時刻はヌッタと同様な方法にて設定しました。
ニッピでの位置通報 は VHF 中継アンテナが無く使用出来ないため HF(短波無線)にて東京管制センターに通報しています。
KE007 はニーバでの位置通報で、ニッピの到達予定時刻を17時8分と伝えていますが、ニッピでの到達を17時7分と報告し、1分早く到達しています。
1分到達時間が早くなった理由としては、風の影響と考えても支障は無いと考えますが、シミュレーションでは、ニーバ、ニッピ間の距離が正しいルートでは558.4ノーチカルマイルであるのに対し、逸脱ルートの距離は548.6ノーチカルマイルとなり、9.8 ノーチカルマイル短く、この為1.1分早く到達する計算になりますので、風の影響を考慮しなくても、1分早く到達した理由を説明出来ます。
ニッピでの風は320度から45ノットと報告していますが、実際の風は約303度から46ノットになります。
正しいコースのニッピと逸脱コースのニッピ間の逸脱距離は 212.7 ノーチカルマイルとなります。
ニッピ ニチム ノッカ 区間
この区間は KE007 にとつて最後となる区間であるためノッカヘの到達予定時刻を18時26分と報告しているものの実際の到達時刻はノッカでの位置通報が無いまま撃墜されましたので ノッカでの到達時刻は不明です、一連の計算手法では各ウェーポイントの到達時刻が重要ですのでノッカ到達時刻を設定する必要があり、以下の点を考察して設定しました。撃墜される直前の情報としては、自衛隊稚内レーダーが18時12分頃サハリンの東方70キロ地点に KE007 の機影を捉えた始めた事、追跡中のソ連戦闘機が18時13分35秒から16分43秒にかけて、四回にわたって、「目標のコースは240度」と繰り返している事実を整合させる必要があります。
前述した「誤差加速度の値と、その方向を色々変更してシミュレーションし、コース方位が240度で、自衛隊レーダーが機影を捉えた18時12分の位置がサハリン東方70キロの地点となり、18時26分21秒の時刻にミサイルで撃墜されたレーダー航跡となる誤差加速度のベクトルを求め、その値を .00000181 Mile/Sec^2 ( 0.33485 Cm/Sec^2 ) とした結果、KE007 の飛行コースの方位は 244.3 度、自衛隊レーダーが機影を捉えた位置はサハリン東岸より東方 81 キロとなりました、通常磁方位を表示する計器の1メモリは5度ですので、4.3度の違いは追跡中のソ連パイロットが240度と読み取る事は、あり得ると考えます、又自衛隊レーダーで捉えた機影の位置が 10 キロ違いますが、レーダーが機影を捉え始めた地点とは、そのレーダーが機影を捉える事の出来る、遠方限界点ですので、この値は誤差の範囲と考えても良いのではないかと考えます、又この逸脱コースの区間距離は実際の区間距離より短くなります、計算結果では、ニッピ、ノッカの正しい距離は 658.5 ノーチカルマイルですが、逸脱コースの距離は 617.1 ノーチカルマイルとなり、 41.4 ノーチカルマイルも短くなり、時間にして 4.6 分早く到達する事になります、これらの事を考慮してノッカの到達時刻を予定時刻より早めて 18時21分42秒に設定しました。
しかし、ノッカに21分42秒に到達したのに、撃墜される26分20秒まで、ノッカ到達の位置通報をしていない点を考慮する必要があります。
KE007 は15分に東京管制センターを呼び出し、飛行高度を 35000 フィートに上昇したい旨を要求し、これに対し管制センターは 20分に KE007 に対し、35000 フィート上昇の許可を出した為 KE007 は上昇を開始し23分に 35000 フィートに到達したことを管
制センターに通報しています、これら一連の管制センターとの通信や、上昇の為の操縦をしている最中にノッカに到達したとすれば、位置通報が遅れる事もあり得えます、またボイスレコーダーの記録によれば、この時間帯にダイナスティー312便の航空機が東京管制と交信中であり、KE007 は位置通報がすぐに出来ない状況であった可能性もあります。
ダイナスティー312便の航空機が東京管制と交信中の 18時26分6秒にミサイルが KE007 を襲い撃墜されました。
このノッカでの逸脱距離は 354.5 ノーチカル・マイルとなりました。
この最終局面での特筆すべき出来事は、後続のKAL015便と会社専用のVHF無線にて風のデーターについて交信したことです、KAL007 は215度から15ノットの迎え風に対し KAL015便は 40度から35ノットの追い風との情報を聞きました、両便ともソウル行きでコースも同じ飛行計画のもと015便は正規のコースを飛行しています、KAL007 も当然正規のコースを飛行しているものと確信しており(実際は600 キロメートル以上北に航路を逸脱している)風向が逆であることに驚いたはずです。
私の一連の考察ではINSの誤作動があると風のデーターに影響が出るとの考えから、007便のINS が表示する風のデーターは正しくないと考えます、シムレーションのデーターから真の風を求めたところ 83度から29ノットとなり追い風となりました。
ボイス・レコーダー
インターネットの Aviation Safety Network というサイトに KE007 のボイスレコーダーの記録内容が掲載されています、この記録内容は17時54分26秒より始まり、ミサイルに撃たれた後の18時27分46秒までの全てが掲載されています
この記録は、私のシミュレーションでは、ウェーポイントのニテムを17時45分に通過していますので、ニテム通過の9分後からの記録となります。
記録内容は、あくびをしながらの、リラックスした会話調である、18時3分過ぎに後続の KE015 便から VHF にて呼び出しがあり両機間でリラックスした会話の中で18時4分に、ノッカ到達予定時刻を KE007 は18時25分、KE015 は18時29分又風は KE015 は40度から35ノットの追い風に対し、KE007 は215度から15ノットの向かい風と、互いに伝え合っていますが、KE007 は両機の風の方向が逆である事に驚いている。
ボイス・レコーダーでは、18時26分6秒に「何が起きたんだ!」との言葉でミサイルに撃墜された事が分かるが、この時の位置は逸脱距離 364.5 ノーチカル・マイルとなりました。
以下に、ミサイルに撃墜された直後の操縦室の状況をボイス・レコーダーの記録をもとに記してみます(英語を日本語に訳しました)。
- 18:26:06 何が起きたんだ!
- 18:26:08 何!
- 18:26:10 エンジン出力を下げろ(出力を最低のアイドル回転まで下げる)
- 18:26:11 エンジン計器は正常
- 18:26:14 着陸装置(おそらく、緊急降下に備え、速度が超過しないように着陸装置を下げる指示を出した)
- 18:26:15 機内の与圧空気が抜けた事を示す、客室高度警報音が作動(ミサイルに撃たれてから、わずか 9 秒後に与圧している機内の空気が抜けた。
- 18:26:17 着陸装置(おそらく着陸装置下げの指示にて、レバーを操作して着陸装置を下げた)
- 18:26:21 自動操縦装置を切り離した事を示す警報音作動
- 18:26:18 飛行高度より降下を始めた事を知らせる警報音作動
- 18:26:22 18:26:24 機内の与圧高度が上がっている(機内の与圧空気が抜けている)
- 18:26:25 スピード・ブレーキを出す(緊急降下にてスピードが出過ぎないように、翼上面のスポイラーを出して減速する)
- 18:26:26 何!、何!
- 18:26:29 チェックした(何をチェックしたかは不明)
- 18:26:30 機内与圧空気が抜けた時、自動的に作動する、客室自動アナウンス装置が作動を始める
- 18:26:33 26:38 26:40 26:41 26:42 客室高度が上がるのを制御出来ない(客室から与圧空気が抜ける状態を止める事が出来ない)、制御出来ない、手動操作出来ない(客室与圧装置が制御出来ない為に自動制御から手動操作に切り替えるも制御出来ない。)
- 18:26:43 手動装置も働かない(客室与圧装置の手動装置も働かない
- 18:26:45 エンジン計器は正常
- 18:26:57 東京ラジオ(東京管制)、こちらコーリャンエアー007です(無線にて東京管制を呼び出す)
- 18:27:02 こちら東京管制、コーリャンエアー007 どうぞ。
- 18:27:10 急減圧が発生したので、1万フィートへ降下する
- 18:27:21 こちら東京管制、コーリャンエアー007, 聞き取れない周波数を10048 にせよ
- 18:27:26 ちょっと待て、ちょっと待て、ちょっと待て、今セットする (周波数をセットしている)
- 18:27:46 ボイスレコーダーの記録が終わる。
もしも KE007 の INS が正常であったならば、INS は次のような表示となっていたはずです。
C R O S S T R A C K D I S T A N C E 3 6 5 N A U T U C A L M I L E S