KAL007 謎の逸脱ルート検証


ベセル ナビー 区間

ベセル及びナビーでの位置通報によればナビー到達は予定時刻より2分遅れています、この遅れは正規のコースでは 310.4 ノーチカルマイルであるのに対し逸脱コースは 319.3 ノーチカルマイルとなったため 1.2 分の遅れが生じました残りの 0.8 分は実際の風の影響と考えても大きな矛盾はないと考えます。
ナピーでの KE007 の通報した風は 250度より 60 ノットですが計算結果での実際の風は 250 度より 49.9 ノットとなりました。
後続の KE015 便の位置報告での風のデーターは 245 度から 50 ノットです、ナビーでの KE007 は正規コースより北方へ約 34 ノーチカルマイルずれていますが、KE015 便の風のデーターに近い数字になりました。
KE007 はナビーでの位置通報時アンカレッジ管制センターと VHF による交信が出来ませんでした、このナビーからの VHF 通信はセントポールにある中継アンテナを使用しますが、このセントポールは正しいルートのナビーから 135 ノーチカルマイル離れており、KE007 の逸脱ルート上のナビーからは 183 ノーチカルマイルも離れている為、VHF の交信可能範囲の限界に近い 175 ノーチカルマイルを考慮すると、KE007 が交信出来なかった理由を説明出来ます、この交信出来なかった原因には VHF の故障も考えられますが 15分遅れでアンカレッジを出発した KE015 便との距離は 104 ノーチカルマイル位ですが、この距離から VHF の交信が出来た事からみて、パイロットは VHF の故障ではないが電波出力が弱いか又は現在位置が飛行コースから逸脱して中継アンテナ間の距離が大きいのが原因ではないか等 VHF交信の出来なかった原因について不安を感じたのではないでしょうか。

ナビー ヌック ニーバ 区間

ヌックでの位置通報はありませんのでヌッタの到達時刻は不明です、従ってナビー、ヌッタ 、ニーバ間が同じグランドスピードになるようにヌッタの到達時刻を設定しました。
ナビーでの位置通報によると、ニーバの到達予定時刻を変更しています、著書「撃墜」では次の様に記しています。
ナビー通過時、はじめは KE015 便経由の位置通報で、「ニーバ通過予定時刻を、「15時49分」と通報、その後しばらく経ってから(9分後)行った短波によるアンカレッジ対空通信局への直接通報では、「ニーバの通過予定時を15時53分」と変更し到達予定時刻を4分遅くしている。
この到達時刻の遅れについての考察は、「ルート・シミュレーション」の項目にて述べた様に、ルート変更したものと想定しました。
最初の通報からわずか9分後に4分遅れの到達時刻変更は正常な飛行では、あり得ません、この4分遅れの理由を次の様に考察しました。
  計算の結果では、正しいコースのナビーから現在飛行しているBコースまでの逸脱距離は 46.6 ノーチカルマイル、Aコースの正しいナビーからの逸脱距離は 33.2 ノーチカルマイルです。
この時点での問題点は位置通報が出来ず同僚機に依頼した事であり当然VHF通信が出来なかった要因を考えた事は容易に推測できます、このフライトはINS航法でありINSの精度が 全てである、つまり3台のINSのデーターを当然確認したはずです、シムレーションでは現在Bコースを No-2 INS を使用して飛行しています、Aコースの No-1 INS コースは 左サイド 13.4 ノーチカルマイルに有ることが確認できます。
つまり No-1 INS のAコースに変更すればセントポールのアンテナに近づき通信が出来る可能性が出てくること又ナビー以降のルートはソ連空域が迫る 位置関係からコースを左サイドに変更しソ連空域侵入を避けるのは重要な事です。
このコース変更をフライトシムレーターで実施した動画を載せましたが、コース変更に要した時間は4分でした、この4分はニーバ―通過予定時刻を4分遅く報告した時間と一致します。  つまりこの4分遅れの通報はINSの誤った誘導によるコース逸脱とこれに伴うパイロットの思考の流れを表しているものと捉える事が出来、KAL007 コース逸脱の要因が今回の一連の シムレーションと結びつきルート逸脱の要因に迫る検証が出来たものと考えます。
KE007 は、このニーバでも管制センターへの VHF 無線交信が出来ず、後続の KE015便を中継して通報しているが、この逸脱ルートのニーバは正しいニーバから113.9ノーチカルマイル離れています、ニーバでの位置通報はシェミア島にあるアンテナを使用しますので KE007 とシェミアまでは249ノーチカルマイルも距離があり VHF 通信可能範囲外となります。
又重要な位置確認の為の地上無線標識も、このシェミアにある為、やはり無線標識を受信する事も出来ず、このルートを飛行する上で最も重要な、ニーバでの位置確認が出来ず、現在のルートが逸脱ルートである事に気が付かず飛行したと考えられます。