KAL007 謎の逸脱ルート検証

ルート・シミュレーション

A- 逸脱ルート

KE007 がミサイル攻撃を受け撃墜された地点は自衛隊のレーダーにより確認されておりその地点を北緯 46 度 34.8 分、東経141 度 26.2分としました。
この地点に逸脱ルートが到達するのに必要な加速度センサー補正誤差値とその方位をシミュレーションした結果、誤差加速度値は 0.00000181 Mile/Sec^2  ( 0.33485 Cm/sec^2 ) 方位は真方位 321 度となりました。
しかしこの逸脱ルートはベセルでの逸脱距離が北方 8.5 ノーチカルマイルとなります。
このベセルでの KE007 の位置はレーダーにて北方へ 12 ノーチカルマイルずれていると確認されていますので、このベセルでの位置の違いは検証の障害となります。
このシミュレーションしたルートを A-逸脱ルートとします。

B- 逸脱ルート

ベセルでの位置はレーダー航跡にて判明しており、その逸脱距離は北方12ノーチカルマイルです。
この逸脱位置になる補正誤差値を求めた結果、誤差加速度値 0.00000254 Mile/Sec^2 ( 0.47040 Cm/Sec^2 )、真方位 321 度となりました。
この逸脱ルートを飛行すると、撃墜される地点は北緯 48 度 27.2 分、東経 139 度 5.7 分となります、この位置はミサイルにて撃墜された位置との緯度差で 1.87 分、距離にして約 112 マイル北方となります。
このルートを B-ルートとします。

逸脱ルート

三番目のシミュレーション・ルートは参考として誤差加速度値 0.00000300 Mile/Sec^2 ( 0.5556 Cm/Sec^2 ) をセットして計算しました。
撃墜される地点の位置は北緯 49 度 37.5 分、東経 137 度 33.4 分となり、撃墜された位置との緯度差は約 3 度であり、距離にして 180 マイル北方となります。
これらシミュレーションの結果、撃墜された地点とベセルにおける北方へのずれ 12 ノーチカルマイルの両方を満足するルートが無い事が、検証する上で障害となります、この障害を解決するヒントが書籍 撃墜にあります、その内容は次の様なものです。
ナビー通過時に、はじめは KE015 便経由の位置通報で、「ニーバ通過予定時刻は、15 時 49 分と通報し、9 分後に行ったアンカレッジ対空通信局への直接通報では、「ニーバの通過予定時刻を、15 時53 分と訂正している。
この内容は非常に重要なヒントを暗示していると考えました、INS 航法の場合ウェーポイントを設定しますが、INS の航法計算は各ウェーポイント毎に行っていますので今向かっているウェーポイントの到達予定時刻が、同じコースを継続して飛行しているにもかかわらず、最初の通報からわずか 9 分後に 4 分も、ニーバの通過予定時刻を変更するケースはあり得ません。
なぜ 9 分後に 4 分も到達予定時刻を変更したのか、その要因として最も可能性の高いケースはルートの変更です。
ルートが変更されれば当然区間距離が異なるので次の通過予定時刻も変わります。
INS 航法は、信頼性を高める手法として通常大型機で長距離飛行する航空機は3台の INS を装備しています、各々の INS の機能は独立して航法計算を行い、ある1台の INS が故障しても残る2台の INS により確実な航法が出来ます、そしてどの INS を使用するかはパイロットが選択出来ます。
そこで A-コースに誘導する INS を No-1 INS とし、B-コースに誘導する INS を No-2 INS として考察します。
上記シミュレーションからベセル通過は B-コースでないとレーダー航跡に合わない為使用しているのは No-2 INS となります。
KE007 はナビー通過後なぜか 使用する INS を No-2 INS からNo-1 INS に切り替えて A-コースに変更したと仮定すると、当然ニーバまでの到達距離は変更され従って到達時刻も変わります。
B-コースはA-コースより逸脱距離が大きいコースです、このB-コースのナビー、ニーバ間のコースからA-コースのニーバへコース変更した為にニーバ通過予定時刻が4分遅くなり、パイロットは最初の通報から9分後に到達予定時刻変更の通報をしたと想定しました。

なぜ KE007 はコースを変更したのでしょか。
超短波無線によるナビー通過の位置報告の交信が出来ず、後続の KE015 に通報を依頼しています、パイロットは交信出来なかった原因として、無線中継基地のセントポールからより離れていないか懸念した可能性はあります、正しいナビーからセントポールまでの距離は著書撃墜では 135 マイルとなっています、私がシミュレーションしたB-コースのナビーは正しいコースから北へ46 マイルずれていますので、セントポールまでの距離は 181 マイルとなり、超短波無線の交信可能範囲の 175 マイルを超えています。
 この時、パイロットは通信の出来ない原因究明として 3台の INS のコースデーターを確認した事は容易に想像できます。
現在はB-コース上を No-2 INS を使用して飛行していますので、No-2 INS クロストラックエラー(XTE と表示してあり、航空機の現在位置が自身の計算したルートから逸脱した距離を示すデーター)はゼロを表示しており、飛行機は正しく No-2 INS のコース上を飛行していることを確認しますが、A-コースを設定している No-1 INS のクロストラックエラーは右に 13 マイルを表示、つまり   A-コースのルートは現在地から左 13 マイルのところにある事を確認します。
このニーバから先のルートはソ連の空域がすぐ右側に迫りますので、今飛行しているルートより 13マイル左側に設定されている A-ルートに切り替えた方が安全と判断したのではないかと想像します。
ナビー以降はヌック、ニーバのウェーポイントを通過しますが、このコースの左側にあるシェミア島は無線標識と位置通報に使う無線中継アンテナがある重要な島です、正しいルート上でもシェミアとニーバまでの距離は135マイルありますので、13マイル近づくことで確実にシェミアの無線標識を捉えようとしたのもコース切り替えの大きな理由であったかもしれません。
パイロットは対空通信局への位置通報が直接出来なかった事をきっかけとして、3台の INS データーを調べ検討した結果、上記懸念を考慮し B-コースから A-コースへ変更し、最初の位置通報から9分後にニーバ到達予定時刻を4分遅くした時刻で通報したと考察しました。
KE007 はA-コースへ変更しA-コース上のニーバへ向かいますが、このA-コースとシェミアとの最短距離は約242ノーチカルマイル離れている事からニーバ通過時の情報を直接管制センターへ通報出来ず、再度後続の KE015 の中継にて位置通報をしています。
またシェミアの航法無線装置である VOR, DME も受信圏外であり受信出来ない為に、KE007 は大きくコースを逸脱し、ソ連領域を飛行している状況を確認出来ず、飛行を継続することになります。
その後ニッピでの位置報告は東京管制に伝えていますが、この位置は超短波無線が使用出来ない空域の為短波無線を使用したものと思います、ニッピにて次のウェーポイントであるノッカ通過予定時刻を18時26分と通報した後A-コースのニチム、ノッカのウェーポイントに向かい飛行し、サハリンに接近しますが、既にソ連の戦闘機が追跡し、KE007 の飛行方位を 240 度とソ連の管制に報告しています。
私のシミュレーションによる、このソ連戦闘機が報告した時間に於ける KE007 の位置での方位は真方位で 234.3 度です、ソ連戦闘機は磁方位を使用していると考えますので(通常、方位は磁方位を使用します)、この地点の磁方位と真方位との差は 10 度ありますので磁方位は 244.3 度になります、このA-ルートは、もともと私が、撃墜されたポイントに一致するように設定しています、従ってこのルートの方位がソ連戦闘機の報告している方位と一致するかが、検証項目の最も重要なポイントとなります、計算結果の 244.3 度と戦闘機報告の 240 度との差は、わずか 4.3 度です、コンパス計器の1目盛りが普通5度であることをみるに、シミュレーションの方位とソ連戦闘機追跡時の方位は一致していると考えられます。
KE007 は A-ルート上を飛行し、ソ連戦闘機が報告している 240 度の方位とミサイルを発射した時刻に撃墜された場所に到達したことになります。

   つまり撃墜されたポイントでの時刻、位置、方位の全てが一致する結果を得ました。
以上がシミュレーションをもとに考察したシナリオですが、現時点にて明らかに判明している、諸事実と一連のシミュレーションしたコースとの相関関係にたいし、矛盾無く一致させる事が出来ました、つまりコース逸脱の原因は、INS に取り込まれた補正誤差値を含めて計算しミサイルにて撃墜された地点へ誘導された事が検証出来たと考えます。